淀・地福寺

 淀川の洪水対策のための川幅拡張に伴う集落の移転に併せて移転することになった寺院の新築である。檀家は集落の住人か転出者であり正に村のお寺である。国の移転補償費は住宅並みで、とても建替えられる額ではなかったが、檀家の寄付と転出し企業経営をする方の大口寄付で建替えが実現した。
 区画整理によって与えられたのは約100坪の敷地であり、境内を残す余裕などなく、なんとか本堂と庫裏を詰め込むのが精一杯であった。それでも僅かばかりの中庭を確保し、本堂の独立性と通風・採光などの室内環境を守った。
 本堂の平面はほぼ正形だが、方形にして形態的にまとまり過ぎることを避け、平と妻の屋根勾配を変え寄棟とすることで古代寺院の大らかさを与え、地域の寺にふさわしい形とした。
 今は現代的な素材や構法で寺院を設計するケースが多いように見受けられるが、ここでは木組みなどの工法や意匠をできるだけ伝統に沿ったものとして設計した。その分手間がかかりコストアップに繋がるが、木材の等級には拘らないことと工務店の協力で何とか予算内に納められ、さらに木材は全て内地材で本堂は吉野桧、杉材でまとめることができた。

Information

所 在 地 京都市伏見区 構  造 木造
敷地面積 341.04㎡ 階  数 地上2階建
建築面積 224.90㎡ 用  途 寺院
延床面積 256.83㎡ 完成年月 平成14年10月