京都幽玄

 築100年を超える京町家を飲食店にコンバージョンした計画である。
 この建物は、かつては料理旅館として、文豪川端康成も宿泊した記録が残る場所である。京町家の特徴である「うなぎの寝床」と呼ばれる細長い敷地でありながら、東山地域特有の高低差のある敷地を巧みに利用した建築物となっている。また建物内には、板塀、通り庭、坪庭、旧三井家から移築されたと伝わる茶室、蔵など当時の意匠が残る産寧坂伝統的建造物群を構成する歴史的に重要な建物である。
 建物改修にあたり、当時の趣がそのまま残ることが重要と考え、既存建物に対して入念な調査を行い、構造的に劣化している部分は補強を行い、当時の意匠を可能な限り残す改修とした。さらに、当時の台所は厨房へ、広間は客席へと改修を行い、当時の用途が大きく変わらないように配慮した。
 京都に残る歴史的な京町屋を次の時代に継承して行くために、当時の趣向や佇まいを感じながら、新たな価値を加えた改修である。

Information

所 在 地 京都市東山区 構  造 木造
敷地面積 778.15 ㎡ 階  数 地上2階建て
建築面積 374.25 ㎡ 用  途 飲食店
延床面積 479.04 ㎡ 完成年月 2017年8月